親知らずは前から数えて8番目の歯で10代後半から生えてくる歯です。親知らずが痛くなる原因は以前の記事に書いてあるので参考にしてください。
痛みが出てきていたり、ただただ口の中で細菌の温床になってしまっているだけの親知らずは、抜歯の対象になります。一概に親知らず抜歯といっても、その難易度は個々のケースによって差があります。今回はその親知らずの抜歯の難易度について解説したいと思います。
上の親知らずと下の親知らずどっちが抜くのが大変?
結論からいいますと、上顎の親知らずの抜歯の方が圧倒的に簡単です。それこそ一瞬で抜けることもあります。下顎と比較して上顎の親知らずが簡単な理由は親知らずが埋まっている周囲の骨が軟らかいことがあります。
また、上顎の親知らずは歯冠部は完全にでていることが多いのに対して、下顎の親知らずは横に倒れたままで歯冠が一部しか出てきていないことが多い為、難易度が上がります。
骨の柔らかさが難易度に影響するということに先ほど触れましたが、骨の柔らかさという点では、若い方の方が骨が柔らかく抜歯が簡単な傾向があります。また術後の回復力も若い方の方が早い為、痛みが長引かない傾向にあります。
つまり、中年の方の下顎の親知らずの抜歯が難しいくなる傾向があります。また治りも遅く痛みが続く傾向にあります。
親知らずの抜歯は出来るだけ若いうちに!
どれくらい骨に埋まっているか?
下顎の親知らずの抜歯の難易度は、どれくらい親知らずが骨に埋まっているかによって決まります。
横になっている親知らずのレントゲンを見るとなんだか難しそうに感じてしまいますが、横だろうが縦だろうが、骨に埋まっている量が問題です。横になっていても、あんまり骨に埋まっていなければ簡単なケースもあります。
抜歯は埋まっているものを掘って取り出す治療行為です。
埋まっている量が多くなる程、周囲の骨を取り除く量が多くなります。まずそこに苦労する。そして深く埋まっているものだから骨を取り除いた後でも、歯が存在する位置が深いところにあるため、親知らずを目視するのが難しい。単純に見づらい。
芋掘りと似ているところがあります。
根っこの本数は何本?
親知らずの抜歯は芋掘りに似ているところがあると書きましたが、その芋の形が複雑な形をしているとこれまた抜くのが難しくなります。親知らずの根っこの本数はひとそれぞれ異なります。
ほとんどの方は1〜2本の根を持ってあり、場合によっては3本の根っこをもっていることもあります。
また根っこの形が大きく曲がったりしていることもあり、1本の根であっても簡単にはいかないこともあります。あまりに大きく曲がっている時などは先端が折れて残ってしまうことがありますが、感染源になることは無いので、無理に掘り返すことはしないで、そのままにしておくことが大半です。
根っこが2本などに分かれている時などは、歯を3分割して抜く必要があり、これまた難易度が上がります。
総括すると、骨の硬そうな中年男性の、根っこが2本に分かれた下顎の親知らず、さらにそれがしっかりと骨に埋まっている時のケースは術者、患者ともに相当な覚悟が必要になります。
神経(下歯槽管)との位置関係
下顎の親知らずの抜歯の場合、神経との位置関係も難易度に大きく関わります。下顎の骨中には、神経と血管が走行している下歯槽管と呼ばれる管があります。
(下の写真の紫の管)
抜歯の際に、この管に対して過剰な力がかかると術後に知覚の麻痺が残るので、親知らずが下歯槽管と近接している際には、どうしても抜歯時の操作が慎重になり難易度があがります。稀に、親知らずの根と下歯槽管が完全に絡んでしまっている時があります。
そういった時は、1回で抜かずに2回に分けて親知らずの抜歯を行うこともあります。
1回目では親知らずの頭の部分(歯冠部)のみを抜去して歯根はそのままにして一旦終了とします。そこからしばらく時間をおき、親知らずの根が下歯槽管と離れるのを待ってから再トライして歯根を抜きます。
こうすることで麻痺などの偶発症を避けて安全に親知らずの抜歯を行うことができます。
親知らずと下歯槽管との位置関係に関しては、通常のレントゲン写真では判断できず、からず術前にCT撮影を行なって、立体的な位置関係を把握することで安全な親知らずの抜歯が可能となります。
御茶ノ水 杏雲ビル歯科では安全に親知らずの抜歯が行えるように、院内にCTを設置して術中でも撮影できるようになっております。
院内設備(https://www.nikoraikai.org/interior.html)もご覧ください。