過去の歯科治療中に痛みを感じたことがある方は、歯科治療に痛みはある程度つきものだと感じている患者さんも多くいると思います。
治療中の痛みに関しては、その原因などが理解できているほうが、痛みの感じ方が違ってくると思いますので、今回は治療中の痛みに関しての解説。
治療中に痛みを感じている部位はどこ?
口の中で痛みを感じる部位は、歯の中の神経、歯を支えている骨、歯肉。
この3つです。この3つのどこかに刺激が加わると痛みとして脳に信号が送られるのです。
神経の残っている歯の虫歯の治療をしている時に感じる痛みは、歯の中の神経が感じている痛みです。虫歯を取り除くことによって外界と神経が近接し、神経へ熱などの刺激が伝わりやすくなり、脳に痛みとして認識してます。
神経が無い歯の虫歯の治療をしていても痛みを感じることもあります。その時に痛みを感じている部位は骨です。歯を支えている骨に振動が加わり、骨の中の炎症部位で痛みを感じているのです。
そして、もう一つ痛みを感じる部位が歯肉です。歯石の除去中などには器具が歯肉に強く触れてしまうと、痛みが発生します。歯肉の痛みに関しては術者側の力量によって痛みが防げることが多いかと思います。
治療中に以外にでも、日常生活で突然感じる口の中の痛みは、歯の中の神経、歯を支えている骨、歯肉のどこかに異常が発生して感じている痛みです。
痛みを防ぐ方法は?
治療中の痛みを防ぐ方法は浸潤麻酔です。麻酔の注射です。それが唯一の方法です。
歯科医師は歯の中の神経、骨、歯肉のどこへ麻酔を効かせるかによって、微妙に麻酔の刺入する位置と深さを変えているのです。
神経の残っている虫歯の治療では基本的には麻酔の注射をしたうえで虫歯治療を行っていきます。よほど小さい虫歯でした麻酔の注射をなしで治療を進めていくことがありますが、ほとんどのケースで麻酔の注射をお願いしてます。
神経のない歯の虫歯の治療などの際には、事前に骨の炎症の度合いを把握し必要があれば麻酔をした上で治療をしていきます。骨に強い炎症がなければ麻酔なしで治療を行うことがほとんどです。
最後に歯石の除去に伴う痛みに関して。軽度の歯石の沈着であればほとんどの場合で麻酔なしで治療が可能です。術者側が器具が歯肉を強く触れないように注意すればほとんど痛みはありません。当然、クリーニング時にも麻酔はなしで行えます。
しかし、歯根の深いところに沈着している歯石の除去を行う際には、麻酔の注射をお願いして治療を進めていくこともあります。
当院では、治療に入る前に痛みが出る可能性のある治療内容かどうかを事前に説明して、そのうえで麻酔の注射をするかしないかを患者さんと相談して決めています。
患者さんも治療中の痛み、麻酔の注射に関して、遠慮なく質問をして頂きたいと思います。
痛みを我慢していいの?
2〜3時間続く麻酔の違和感を嫌い、痛みを我慢して麻酔なしで治療を受ける方もいます。多少の痛みなら我慢しちゃうという方もいますが、我慢することの弊害はあるのでしょうか?
歯石の除去時の痛みに関して、我慢できる程度の痛みであれば麻酔は必要ありません。麻酔するかどうかは患者さんのさじ加減にお任せしています。
対して、神経が残っている歯の虫歯の治療の際に感じる痛みに感しては、我慢しない方が良いとされています。
虫歯を削る際に麻酔の効きが悪く、断続的に痛みの信号を脳に送りづづけるような状況が続くと、神経が変性してしまい、詰め物をきっちと入れた後でも冷たい物がしみるなどの症状が残ってしまうことがあるからです。
治療中に痛みがある際には、我慢をなさらず『痛いよー』ということを術者にしっかりと伝えることは大切です。
患者さんが感じている痛みを正直に伝えてくれることで、ドクター側は『麻酔をする』『麻酔を追加する』『歯肉に刺激が行かないように器具の扱いに注意をより払う』などの対応を取れます。
遠慮なく教えて頂いた方が、スムーズに気持ちよく治療が完了すると思いますの、遠慮せずどんどん教えてください。よろしくお願いします。
麻酔がまったく効かない時は?
虫歯治療時にしっかりと麻酔の注射をして時間を置いて削ってみたものの、ちょっと削っただけでも痛む。さらに麻酔を追加して時間を置いて削るもまだ痛む。
そんな経験はないでしょうか?
これは麻酔の仕方が下手という訳ではなく、歯髄の炎症が強すぎて、通常の浸潤麻酔が全く効かない状況に陥っているので発生します。特に硬い骨で歯根が囲まれている下顎の臼歯部(奥歯)の大きな虫歯治療時などに割とおきます。
そんな時には、『下顎孔伝達麻酔』です。
通常は、下顎親知らずの抜歯の際に使用される下顎孔伝達麻酔ですが、虫歯治療治療時のどうしても浸潤麻酔が効かない際などに、下顎孔伝達麻酔を応用して無痛治療に取り組んでいます。