歯に穴が空いて歯科医院へ行ったところ、虫歯の大きさからして神経を取ることになるかもと言われた経験はないでしょうか?
『大きな穴はあいたけど痛みは軽度。しかし、歯科医師は神経を取る話をしてくる。なぜなのか?』
このような経験をされた患者さんも数多くいると思います。本記事では神経に近接している大きな虫歯の治療法について解説します。
こちらのブログ記事も参考にしてください。
『大きな虫歯ができて穴が空いた !そんな状況でも神経を残す治療方法の解説』
大きな穴はどこまで進行しているのか?
大きな穴があいてることは口の中をよく見ればわかりますが、大事なことはその虫歯がどこまで進行しているか?です。そのためにはレントゲン写真が大切になります。
レントゲン撮影をすることで術前に虫歯の範囲と神経の位置関係を大まかに把握する事ができます。
レントゲンの結果、虫歯の範囲が神経と離れていれば、虫歯の箇所を丁寧に取り除き、取り除いた部分を適切な材料で封鎖すれば治療が完了です。
かたや、虫歯の範囲が神経に近接していると話しが複雑になります。
患者さんができたら取らないで!と願う歯の神経のことを考慮しながら治療する必要があるからです。
大きな虫歯の時の神経の状態は、3パターン!
虫歯が大きい時の、神経の状態には以下のような段階があります。
1.神経への細菌感染は無く、神経は生きている状態。
2.神経への細菌感染は軽度で、神経は生きている状態。
3.神経への細菌感染が重度で、神経が完全に死んでいる状態。
歯科医師は患者さんが訴える症状、そしていくつかの検査法を駆使して、術前に神経は生きているのか死んでいるのか?また神経への感染の度合いはどれくらいか?を探ります。
神経は生きているのかを知る。その検査方法とは。
神経の生き死にを調べる方法として、歯に熱や氷そして弱い電気などの刺激を与え、神経の反応を診る方法があります。
刺激を加えても全く反応を示さない時は神経が死んでいる3の状態であると判定し、逆に反応がある際には、神経が生きている(1または2の状態)事が分かります。
また前述したレントゲン写真は虫歯の範囲と神経との位置関係だけでなく、神経の生死を判断できることもあります。
レントゲン写真で歯根の先に黒い影が見える時は、神経が死んでいる3の状態と断定できます。
また患者さんが訴える痛みの度合いも、神経の生死の判定にある程度参考になります。
日常生活で冷たいものがしみる感覚があるようでしたら、神経が生きていることが多いです。一方で頭痛につながるレベルの痛み、痛みで眠りから覚めるレベルの痛みが出ている場合には神経は死んでしまっていることが多いです。
治療方法は?
神経がすでに死んでしまっているようでしたら、神経の死骸を取り除く治療、つまり根管治療を行なっていくことになります。
一方で、まだ神経が生きているとなれば、神経を残せる可能性があります。虫歯の部位を完全に取り除いた結果、露出してきた神経に対して、神経を保護する特殊なセメントを使用して、神経の保護を図る治療方法です。
この特殊なセメントの登場により、取らずに残せる神経は飛躍的に増えたと感じています。詳しい治療方法は次回以降の記事で。
治療時の大切にしていること。
御茶ノ水 杏雲ビル歯科では、感染した部位(う蝕象牙質)は徹底除去することを基本方針としています。感染象牙質には修復物がしっかり接着せず、そこから虫歯の再発が起こってしまうことがあるからです。
虫歯の再発を防ぐために、拡大鏡などを使用して徹底的な感染部位の除去をおこないます。
一方で、患者さんとしては、最初の穴はまだ多少小さかったのに、虫歯を取り除いたら、ずいぶんと歯がなくなってしまったと、ショックを受けるかもしれません。
ショックを受ける気持ちも理解できますが、治療した部位に虫歯が再発して、再度の治療になることを考えると、一度の治療でしっかりと感染部位を取り切ることが、その歯の寿命を結果的に伸ばすことなります。