歯は見えている部分は氷山の一角。
私たちが口の中を覗いた時に見える白い歯は、歯全体の一部分です。実際は赤い歯茎の中に、歯の根っこが存在し、根っこが白い歯を支えています。専門用語では、口の中で見える部分を歯冠(しかん)といい、歯茎の中に隠れている部位を歯根(しこん)といいます。歯は歯冠と歯根で構成されています。
80歳まで20本以上の歯を残そうという8020運動がよく知られていますが、口の中で残っている歯の数え方で患者さんがよく勘違いされていることがあります。
歯冠部が大きく虫歯になって、全て歯を覆うような被せ物が入っているとそれは自分の歯でないと思い、被せ物が多い方だと、80歳までに20本も歯を残せそうにないと悲観される方がたまにいるのですが、それは間違いです。
どんだけ大きな被せ物が入っていようが、神経をとって被せ物が入っていようが、あるいは義歯の下に隠れる程、小さくなっている歯であっても、歯根が口の中に残っていれば、それはまだ口の中に歯があるとカウントします。
見えないところの根っこが土台となって、笑顔の大切な要素の白い歯を支えています。
歯と骨は同じもの?
これもまた、たまに患者さんから質問されることですが、歯と骨は別物です。上の話で、歯は歯冠と歯根で構成されると書きましたが、歯は歯根部が骨の中に埋まっています。
歯を木に例えるとわかりやすいかと思います。
普段私たちが目にする街路樹の見えている部位が歯冠。土にうまっている根っこが歯根です。そして、根っこを埋めている土が骨です。力をかけて引っこ抜けば、木が地面から根っこごと抜けるのと同じように、歯も力をかけて揺さぶれば抜けます。
虫歯は、木や木の根っこの部分がダメになっていく病気で、歯周病は土そのものがなくなっていく病気ということになります。
水害などで土が流されると、そこにあった木がグラグラして倒れてしまうのは、まさに歯周病と同じ感じです。
歯の中には神経がある。
上で、歯を木に例えました。木の幹の中には根で吸収した水や栄養を移動させる管がありますが、歯にも似た構造があります。それが歯の神経です。
歯を上から穴をあけて削って行き、神経にまで到達すると出血してきます。
歯根から歯冠にかけて細い管のような空間が歯の中にあり、その中に血管と神経が通っているのです。大きな虫歯になってしまい、虫歯が神経にまで達し、血管と神経が通っている管にまで菌が感染してしまった時には、血管と神経を取り除く治療をしていきます。
これがいわゆる、神経の治療、あるいは根の治療と言われるものです。
神経を取り除く治療を確実に行うためには、ある程度感染していない健全な歯の部位を削らざる得ないため、神経の治療後の残された歯の量がかなり少なくなります。
そのため、歯根が割れやすくなったりしていいことありません。
神経に達するまでの大きな虫歯をつくらないことが、歯を失わないためには重要になります。